ご挨拶

第19回大会開催にあたって


 


 

大会長

吉田 悟

文教大学人間科学部教授、博士(学術)

本学会理事、本学会認定インストラクター

 

 



19回大会を引き受けるにあたり、前回本学で開催した12回大会(20081010-11日開催)の前後から現在までについて、つらつら考えてみました。

12回大会の前年(2007年7月24)、アルバート・エリス博士が亡くなりました。12回大会では、昨年亡くなられた鍛冶茂先生(本学会スーパーバイザー)が、入門コース研修を担当されました。200812月には本キャンパスで、エリス研究所所員であったトーマス・ジャレット博士を招聘し、エリス博士の追悼講演を開催しました。講演内容は、エリス博士の亡き後の、エリス研究所の動向やREBTの発展の方向性についてでした。さらに翌2009年3月、学会名称を論理療法学会から人生哲学感情心理学会へと変更するにあたり、その論議をするためのシンポジウムを本学で開催しました。このシンポジウムで、ラショナルの意義を再確認し、「論理」ではなく「人生哲学」へと学会名称変更することを決定しました。学会名称を巡るシンポジウムはラショナルとは何か、でした。総括すると、この10年間私たちは、一貫して、深い哲学的変化あるいはラショナルな生き方の醸成をじっくりと成し遂げていくことを重視してきました。

一方において、REBTを取り巻く昨今の状況は、この10年間で激変しました。第1の変化は、エビデンスと簡便さの重視です。2012年の世界精神保健デーでは、うつ病がテーマ(うつ病:世界的危機)として取り上げられ、うつ病が精神保健だけでなく、保健全領域中もっとも深刻な疾患であると位置づけられました。うつ病への対応策の一つとして、日本でも、2010年よりうつ病に対してエビデンスがある認知行動療法が保険点数化され、認知行動療法に習熟した医師が一定の条件のもとで認知行動療法を実施した場合に診療報酬の対象となりました。さらに、抑うつの予防・治療にエビデンスがある活動として、低強度認知行動療法が世界的に注目を集めるようになってきました。第2の変化は、ポジティブ心理学の台頭です。成果及びウェルビーイングの促進に焦点をあてた、ポジティブ心理学の実践版とも言うべきコーチング心理学が注目を集めるようになってきました。コーチング心理学は、臨床心理学、カウンセリング心理学とは異なる独立した研究・実践領域として、急速に確立しつつあります。

 

田中克俊教授の基調講演及び大会企画シンポジウム(REBTとコーチング心理学)が、REBTの特徴である「深い哲学的変化」、「ラショナルな生き方」「エレガントな解決」を大切にしつつ、エビデンスや簡便さを追求するにはどうしたらよいだろうか? REBTが治療や予防だけでなく日常生活でより活用・普及するにはどうしたらよいか? について、会員各位が考える機会となれば、本大会は成功でしょう!